MENU

2023年JET Streams春号

  • HOME »
  • 2023年JET Streams春号

JET Streams

 
 

第53号(2023年春号)

 
紹介
 
CLAIR
 
JETAA-I
 
JETの向こうに
 
春号へようこそ

自治体国際化協会(CLAIR)JETプログラム事業部

いつもJET Streamsを読んでいただきありがとうございます。JETプログラム事業部です。こちらは少しずつ暖かくなり、東京の公園では花々が咲く季節になりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回はJETプログラム経験者に関する内容をメインに、幅広いトピックをお届けします。2023年春に新たにクレアへ着任した、前駐アイルランド特命全権大使の北野充参与のインタビューに始まり、二つの重要なイベント「JETプログラムキャリアフェア」及び「JETAA-I国際会議」をレポート。そして国税庁による、日本酒と国際関係を絡めた新観光事業をご紹介します。最後に、配属先となった千葉で、祖母の力を借りながら草の根の国際交流に力を尽くした元ALTによる、心温まる話をお伝えします。 JET Streamsでは、ご自身の経験をシェアしていただける新しいライターを募集しています。希望される方は、こちらから記事の提出方法をご確認ください。

 
前駐アイルランド特命全権大使がクレアに参与として着任

人物交流の推進・北野充参与との対話

2023春に新たにクレアに着任された北野充新参与を紹介します。同氏は、自治体国際化協会(クレア)の参与として、これまでの豊かな外交経験を生かし、JETプログラム参加者・経験者と日本社会との間に存在する文化的かつ言語的な溝を埋めつつJETプログラムの運営をサポートする重要な役割を果たすことが期待されます。参与は、JETプログラム及び関係団体の目的を包括的に理解し、その知識とグローバルな視点を活かしてJETプログラムの運営を支える役職です。

新しく着任された北野参与に、これまでの経験や、クレアでの抱負について語ってもらいました。

 
 
 
 
 

北野充参与とのインタビューの一部

「私は1957年に東京で生まれました。大学卒業後、外務省に入省しました。外務省では、43間様々な職務を経験し、日本と海外を行き来しました。最近の職務でいうと、2019年から2022年まで3年4ヶ月の間、在アイルランド日本国大使館の大使として勤めました。その内、2年8ヶ月がコロナの期間でしたので、コロナ禍の中、JETプログラムの実施のため大使館の同僚と一緒に努力してきました。また、2005年から2008年までの間、在米大使館の広報文化担当公使を務めた際も、JETプログラムは重要な業務の一つでした。」

「アイルランド在勤中のことについて言えば、JETプログラムについての思い出がたくさんあります。昨年、教育省ポストプライマリー・ランゲージズ・アイルランド (PPLI)所長のカレン・ラドックさんに、外務大臣表彰を授与しました。カレンさんには、アイルランドにおける日本語教育の推進に大変貢献していただきました。そして、彼女はJETプログラム経験者の一人です。2018年度の国際交流基金の調査によると、アイルランドは人口10人あたりの中等教育レベルの日本語学習者数が西ヨーロッパで最も多く、そこには、カレンさんをはじめとするJETプログラム経験者の献身的な努力によるところが大きくあります。また、昨年は、北海道の東川町の青少年吹奏楽団一行がアイルランドを来訪して素晴らしい交流の実現した際にも、東川町に配置されていたアイルランド出身CIRフィーボ・メイヴさんとカナダ出身CIRマティ・サフランヤクさんが大活躍しました。」

「JETプログラムは間違いなく世界最大級の最も成功した人的交流事業の1つであり、この素晴らしい取り組みに関わっている全ての人が、その結果を非常に誇りに思うべきだと思います。私は、JETプログラムは、複数の意義を持っていると考えてきました。まず、外国語学習を支援する役割を果たしています。次に、受け入れ経験を通じて自治体の国際化に貢献するという意味があります。更に、派遣国と日本とをつなぐ人材が生み出されるという意義があります。」

「外交の分野では、JETプログラムのような人物交流プログラムは、『パブリック・ディプロマシー』の活動の一つと位置づけられ、近年、その重要性が増しています。通常の意味での外交は相手国政府に働きかける活動が中心であり、働きかける相手は、限られた範囲の人となります。これに対し、パブリック・ディプロマシーは、相手国政府以外の幅広い一般層に働きかける活動です。それを通じて、自国について好意を持ってもらったり、自国の重要性を認識してもらったり、自国について正確な理解を持ってもらったりすることを目指す活動です。広報、文化イベント、知的交流などさまざまな活動を行っていきます。日本の場合は漫画やアニメなどの活用も有益です。こうしたパブリック・ディプロマシーの活動の中で、人的交流は、両方の国をつなぐ人材を育てる上で大きな重要性を持っています。JETプログラムには、75,000人以上の経験者がおり、パブリックパブリック・ディプロマシーの好例となっています。」

「私は、外務省での勤務を通じて、パブリック・ディプロマシーの重要性を痛感しました。そのため、CLAIRの参与として、再度、JETプログラムに関わるとができることをうれしく思っています。そしてJETプログラム参加者には、日本に滞在中に経験するすべての機会を大切にし、プログラム終了後も日本への関心を持ち続けていただきたいと思います。JETプログラム参加者が日本人とのつながりを築き上げ、維持することは、個人のレベルにおいて素晴らしいことであるのみならず、永続的で友好的な国際関係を築く上でも大きな意義があると思います。」

我々JETプログラム事業部は、北野参与とともに、JETプログラムのより一層の発展へ向けて取り組んでまいります。

 
JETプログラムキャリアフェア

2023年2月26日(東京)・3月4日(大阪)

2023年2月26日、3月4日の2日間、3年ぶりの対面形式で「JETプログラムキャリアフェア」を開催しました。

新型コロナウイルス感染対策により過去3年間はオンラインでキャリアフェアを開催していましたが、今年度は全国から延べ450名以上のJETプログラム参加者(経験者を含む)と東京では69社、大阪では31社の企業等にご参加いただきまし。2日間の開催期間中、企業とJETプログラム参加者との間では450件の個別面談が行われました。

参加者と企業は、3年ぶりに対面形式で合うことができました。■ 参加者と企業は、3年ぶりに対面形式で合うことができました。

オンラインツールを用いて開催した際には、「コロナ禍において企業と直接話すことができてありがたいけど、より良い印象を与えるために対面で参加したい」とのお声をいただいたことがあり、出展企業からも同様に「JET参加者の人格などをより理解できるために対面で参加したい」とのご意見をいただきました。2023年のキャリアフェアではJET参加者及び出展企業の希望に応え、出会いの場を提供することができ、大変嬉しく思っています。

参加者と企業は、3年ぶりに対面形式で合うことができました。 ■ 参加者は、企業代表のプレゼンテーションを聞き、ブースで個別相談も行うことができました。

今後とも、JETプログラムキャリアフェアで就職するJETプログラム参加者が増えるよう、より充実した事業の提供に努めていきます。

 
 
2022年JETAA国際会議

JETAA国代表と3年ぶりの再会

 

Participants joined from all around the world for a memorable Welcome Reception. ■ ウェルカムレセプションに集まった世界各国からのJETの仲間たち。

2022年JETAA国際会議を2022年11月10日から12日まで東京の台場で開催しました。本会議は、JETAA International(JETAA-I)、総務省、外務省、文部科学省と自治体国際化協会の共同主催で行われました。世界中で活躍しているJETAA各支部間およびAJET、JETプログラムの運営に係る関係団体との連携強化が本会議の目的です。

本会議には、JETAA-I役員、JETAA各国代表、JETAA東京支部と西日本支部、AJET全国役員、関係団体(JNTO、JETRO、JF、JOES)等、67名が参加しました。会場となった東京ビッグサイト「タイム24ビル」は、東京湾に浮かぶ人工島「お台場」にあり、海を見渡す絶景を楽しむことができました。

An opinion exchange with representatives from Japanese government agencies provided a space for discussion. ■ 意見交換会では、日本政府及び関係団体と活発に議論を交わしました。

本会議では、JETAA各国代表が自国のJETAA支部の活動を紹介し、他の参加者と議論を交わしました。また、総務省、外務省、文部科学省とその他の関係団体との意見交換が行われ、JETAA-Iによる動画コンテストの提案、現役JETプログラム参加者やJET経験者のキャリア支援、JETAA支部活動への助成、JET経験者と任用団体との繋がりを強化する取り組み等に焦点が当てられました。

The JETAA International Meeting was held for the first time in three years.  ■ JETAA国際会議の開催は3年ぶりとなりました。

本会議は、2020年の新型コロナウイルス感染症感染拡大以降、初めて対面式で開催することができたイベントの一つです。幸いなことに、海外からの参加者全員が無事に来日し、思い出深いイベントとなりました。11月11日の夜、グランドニッコー東京台場で行われた歓迎レセプションは、この会議のハイライトの一つで、通訳を介しながら、自由に交流を楽しみました。今回の国際会議は、対面での交流の重要性を明確に示していました。最後まで活発な議論が行われ、JETプログラムのさらなる繁栄と国際交流の深化に貢献する、大変有意義な会議となりました。

 
日本文化を知って「乾杯!」

酒蔵ツーリズムで国税局がJET参加者・経験者へアピール

JETプログラム参加者は異文化交流と異文化理解のエキスパートであることから、地域や国の組織はJETプログラム参加者や経験者の意見を求めることが多くあります。2023年1月から4月にかけては、16道府県で実施された無料の酒蔵ツアーに、日本在住のALTが招待されました。

Sake Tour participants gathered outside Harushika Brewery.
■ 日本酒ツアーの参加者が「春鹿酒造」に集合。

その一つが、2023年1月21日に奈良県の協力のもと、大阪国税局が開催したイベントです。日本酒の蔵元には、長くて魅力的な歴史があります。1884年創業の(株)今西清兵衛商店は、「春鹿」のブランドで知られ、「南都諸白」と呼ばれる奈良県の酒造りの伝統を受け継いでいます。「春鹿」は現在、10カ国以上に輸出されています。

Participants were able to try five different types of sake.
■ 参加者は5種類の日本酒を試飲することができました。

今回のイベント参加者は、奈良県の伝統的な酒造りの技術を生かした5種類の日本酒を試飲することができました。奈良県ALTのマディソンさんは、「本当に楽しかったです。日本に住む外国人にとってもいい経験になると思います」と語りました。

Participants could see how sake is made.
■ 参加者は、日本酒が作られる様子を見学しました。

このイベントには、お香を練り込んだ墨汁を素手で握って成形する「握り墨体験」もありました。1000年以上の歴史を持つ奈良県ならではのこの体験は、参加者に好評で、イベントの最後を飾る印象的なものになりました。

酒蔵や日本酒にについてもっと知りたい方は、以下の動画もぜひご覧ください。

https://www.nrib.go.jp/English/sake/japanese_sake_essentials.html

(独立行政法人 酒類総合研究所作成)

なお、地域の酒蔵と観光資源を巡るALT向けのこうしたツアーは、来年も1月から4月の間に、日本各地で開催される予定です。

 
異文化の壁を超える

ミシガン州のトウモロコシ畑から、千葉の田んぼへ – 祖母の旅

草の根の国際化」という言葉は、JETプログラムに参加する前は、あまり聞き慣れない言葉でした。しかし、草の根の国際化が日本や世界の地域社会の国際化に果たす役割の大きさをすぐに理解することができました。

JETの道を歩み始めた頃、私は2018年に大学を卒業したばかりの新社会人でした。私は子供と教えることに興味があったので、ALTとして1校だけでなく2校の小学校に配属されることになり、とても喜んでいました。サマーキャンプや家庭教師で何百時間もボランティアをしてきた経験が、ついに教室で生かされることになったのだとワクワクしたのです。ところが実際に着任して、生徒の平均年齢が60〜80歳の公民館で英会話教室を担当することになったと聞いたときのショックは大きかったです。

Parties with the Community Center Class!
■ 英会話教室の皆さんと色々なパーティー!

公民館で私が担当することになったのは、趣味として英語を勉強する地元の定年退職者を主に構成される初級クラスでした。本格的な授業を実施した経験のない22歳の私は、いきなり授業の企画、内容や教材の作成、そして週1回の2時間のクラスを全部一人で担当することになり、とても緊張していました。しかし、生徒たちが見せてくれた親切さと深い理解によって、私はすぐに安心し、不安が解消されました。いつの間にか毎週の英会話教室が私の1週間のハイライトとなり、面白いレッスンを計画し、毎週公民館の生徒さんたちと楽しい時間を過ごすことを常に楽しみにしていました。

当初の授業には、英語の文法や言語学的な要素が多く入っていました。しかし、生徒さんが外国の文化に強い関心を持っていることに気づき、レッスンの大半を私の母国であるアメリカの文化や生活について教えることにしました。生徒さんたちは、私の幼少期の話を聞いたり、子供時代の家や近所の写真を見たりすることに大喜びしてくれました。偶然ですが、私にはほとんどの生徒と同い年の祖母がいます。祖母と私は時差のある別の国に離れて住んでいますが、とても親しい関係を保ち、頻繁に電話して近況を報告し合っています。

A handmade kimono gifted to me from a student!
■ 生徒さんからいただいた手作りの着物!

授業中に祖母の話をしたり、祖母の背景について教えたり、私が答えられなかった文化的な質問を祖母にして回答を生徒さんと共有したりすることがよくありました。そのため、祖母は私のクラスの人気者になりました。私が祖母に生徒の質問をしたり、英会話教室で行った楽しい活動について話したりしているうちに、祖母も生徒の背景や生活習慣に興味を持ち始めました。生徒さんたちが祖母の人生や背景に興味を持っただけでなく、祖母も生徒さんたちの人生に同じように関心を持つようになりました。祖母は昔から旅行や異文化交流に熱心でしたが、それまでアジアに視野を広げたことはありませんでした。

2019年3月、祖母はアメリカから日本への14時間の旅に出て、目に浮かぶ景色がミシガン州のトウモロコシ畑から、千葉の田んぼへと変わりました。祖母の2週間の旅に、私の2年間の日本での経験を詰め込むのは簡単なことではありませんでしたが、祖母が日本の観光地と、田舎での実際の暮らしの両方を楽しめるように、企画を立てました。私の配置先の大網白里市の市民は、想像以上に協力をしてくれました。祖母は私が教えていた小学校を訪れ、2年生と一緒に給食を食べ、鬼ごっこをしました。中学校では、祖母は生徒たちにミシガンについて教えました。そして何より、私は英会話教室の生徒さんたちに祖母を紹介することができました。

生徒さんは贈り物や手紙、歌で私の祖母を大歓迎してくれました。生徒さんは、アメリカでの生活、私の幼少期、日本の印象の話を聞いて感激しつつ、同様に祖母に日本文化について教えることも楽しんでいました。生徒さんは私たちを和食屋さんに連れていってくださり、着物を着たり、日本民謡を歌ったりして、授業で一生懸命に勉強してきた英語で祖母に日本の文化や生活習慣について教えました。最後に祖母が、日本への旅を特別なものにしてくれた以上に、生徒さんが孫に注いでくれた愛情にも感謝していると、涙を流しながら感動的なスピーチをしてくれました。祖母は、22歳の大好きな孫が外国で一人暮らしをすると思うと実は心配でたまらなかったのだと明らかにしてくれました。しかし“第2の祖父母”のサポートのおかげで、日本にいる孫がやはり一人じゃないと納得し、安心することができたのだと話してくれました。

祖母は、この体験を自分の言葉で語ってくれました。

「日本語が全くわからないので、一人で国外を旅行するのはかなり緊張しましたが、簡単な旅でした。相手は英語がわからなかったら、すぐに英語ができる人を探してくれました。タイミングが良く、お祭りが行われている時期に神社を訪れました。たくさんのお寺も訪れ、日本の参拝文化についてたくさん学びました。アメリカでは、普段車か飛行機でしか移動しないので、日本でバスや電車に乗るのは新鮮でした。クィントンが働いていた学校にも行って、とても勉強になりました。子供たちはとても熱心に勉強しているようで、時間がしっかり守られていました。学校自体もアメリカと違って、とても規則正しくて、綺麗でした。クィントンの英会話教室の皆様にもお会いできました。皆様はとても親切で、英語と私の生活について関心を持ってくれました。ランチにも連れて行ってくださり、たくさんの和食を食べてみることができました。ほとんどの料理はとても美味しかったけれど、いくつかクィントンに食べてもらわないといけなかったのです!京都、東京、千葉を訪れることができました。各地は文化が違っていて、綺麗でした。いつか戻りたいなぁと強く思っています。素晴らしいお友達もできました。特に、クィントンの学校の英語の先生はとても親切で、よく私のことを見守ってくれました。また、英会話教室の皆様と出会い、日本の文化に触れることができてとても感謝しています。」

Grandma finally meets the Community Center Class!
■ 祖母と英会話教室の皆さんとの待望の出会い!

この出会いは、祖母と生徒さんだけではなく、私にとっても本当に忘れられない思い出になりました。2つの文化の架け橋になることは、素晴らしい経験であり、生活様式は違っても、心を開いて新しい文化を学びたいという共通点を持つ人々を繋げることができたことに感謝しています。今でも、祖母は私の元生徒さんと手紙やホリデーカードなどを交換して連絡を取り合っています。JETプログラムでの活動は終了しましが、草の根の国際化の重要性についてよく理解している今では、それがいかに影響力があるかをできるだけ広めたいと思っています。祖母は未だに日本で受けたおもてなしや優しさについて話しています。誰かが自分の国に帰り、あなたの国で出会った素晴らしい人のことを懐かしく語るきかっけになることを、皆様にお勧めします。

プロフィール

クィントン・モアヘッドはアメリカ合衆国ミシガン州出身です。ずっと憧れていた海外に出る夢により、大学で国際関係を専攻し、2018年にJETプログラムのALTとして来日しました。千葉県大網白里市で素晴らしい4年間を経て、上京することを目指しました。現在は自治体国際化協会のJETプログラム事業部でプログラムコーディネーターとして勤務しており、暇な時間があるときに勉強したり東京を探索したりしています。

Quinton Moorhead

PAGETOP
Copyright 2015 by the Council of Local Authorities for International Relations (CLAIR)