2022年JET Streams夏号
紹介
JETAA(元JET参加者の会)
JETの向こうに
JET Streams 2022年夏号へようこそ!
7月下旬に梅雨が明け、8月上旬になり、東京は青空が気持ち良く広がっています。
さて、今年の夏、20周年を迎えた 「JETAA ジャマイカ」 から記事を頂きました。私達は20周年を迎えられたことをとても誇りに思っています。とても大きな成果であり、今後の20年も元気いっぱいに活動を続けることができるよう、心よりお祈りしております。おめでとうございます。今後も、JETAA ジャマイカの皆様がプイの木の下で
たくさん集うことができますように!
また、私たちは長年JETAAに入会しているJET経験者が、来日後の隔離期間中の新規JET参加者への支援の重要性を語る記事もあります。最後に、JET経験者に“穏やかな世界へ” という七夕の願いを共有していただきます。
私たちは今回も皆さんにこの記事を参考に楽しく読んでいただけたら嬉しいです。
いつでもJET Streamsの新しいライターを募集しています。
もしあなたの経験を共有していただける場合は、以下に記事の提出方法を載せていますので参照ください。
ただいま、日本ではお盆休みに近づいていますね。私たちJETプログラム事業部一同、あなたがいつでもどこでも、楽しく涼しい夏を過ごすことができるよう心より願っています。
テリーク ブラウン, 元長崎県 外国語指導助手 (2011-2015)
2002年、JETプログラム同窓会「JETAA ジャマイカ」が設立されました。少人数の会にもかかわらず、JETAAジャマイカは現地にも、世界全体にも大きな影響を与えています。2009年、JETAAジャマイカがJETAA国際会議を開催するという偉業を達成できたのは、その証拠の一つです。この20年間、日本とジャマイカの関係を保っているJET Settersとも呼ばれるジャマイカ出身のJET経験者の熱意は揺るぎないものでした。そのため、2022年に20周年を祝うことをとても誇りに思っています。
JETAAジャマイカは、さまざまな社会的介入、学校訪問、関連団体や他の非政府組織との戦略的な協力など、輝かしい活動経歴を誇っています。毎月のミーティングや、年1回発行のニュースレターなど、刺激的な活動の溢れている年間スケジュールを通して、会員や友達、そしてジャマイカのコミュニティとのつながりを保っています。今まで、下記のイベントを含め、注目を集めるイベントをたくさん開催してきました。
- 論文とポスターコンテスト を通じて学校で日本に対しての異文化的な意識を高めました。
- プイの木の根本でピクニックでは、皆で集まって友情関係を育みながら食事をし、楽しい時間を過ごしました。
- ビーチクリーニングでは、社会貢献活動として環境を守り、環境に対しての意識を高めました。
- 学校訪問 を通じて日本語、日本文化及びJETプログラムの推進に貢献しました。
年末になると、会員や友人同士で集まって一年間の出来事を振り返り、本格的な忘年会の雰囲気を味わいました。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、対面形式のイベントのほぼすべてが中止されてしまいましたが、JETAAジャマイカは新しい取り組みを積極的に取り入れることができました。例えば、自己啓発および専門的な能力開発を目的としたバーチャルセミナーの実施に率先して取り組みました。このセミナーは、会員の知識を深める定番イベントとなりました。幸いなことに、コロナ禍から平常の生活に戻りつつあり、対面イベント実施の可能性が見えてきことをとてもうれしく思っています。例えば、2022年3月には、「JET Setters」が学校訪問を行い、生徒たちに好奇心や将来の希望を与えました。
- ドゥヌーンパーク工業高等学校で日本語及び日本文化のワークショップを開催しました。
- JETAAジャマイカは、独立行政法人国際協力機構(JICA)ジャマイカ支所(JAAJ)と連携し、パラダイスストリート基本学校の改修のためのコミュニティアウトリーチ事業を実施しました。
JETAAジャマイカが長く続いているのは、会員全員の努力と支援のおかげです。この支援がなければ、20周年を迎えるという大きな目標は果たせませんでした。
今年は20周年を祝いながら、次の20年がジャマイカと日本の文化交流や交流に対しての意識向上のさらなる促進につながることを期待しています。ジャマイカと日本のつながりを記念する2022年度は、ワクワクするイベントの開催を通じコミュニティをより盛り上げる年になると楽しみにしています。JETAAジャマイカ20周年、おめでとうございます!!
プロフィール
テリーク ブラウン氏は国際発達専門家であり、現在はジャマイカのキングストン市にある国連環境プログラム(UNEP)カルタヘナコンベンション事務局に派遣されています。ジャマイカ生まれのブラウン氏は、ボランティア活動、生涯学習、コーチングやメンタリングなどに関心があり、異文化関係アクティビスト・人道主義者として活動されています。2011年から2015年までの四年間は、長崎県大村市にて外国語指導助手(ALT)としてJETプログラムに参加されました。2015年にジャマイカに帰国してからは、JETプログラム同窓会(JETAA ジャマイカ)に参加され、2016年から2017年までの間はJETAAジャマイカの広報官(PRO)として力を尽くされました。2022年から2023年の間、ブラウン氏はJETAAジャマイカの執行委員として推薦され、再度PROとして当選されました。多様な業務の中、JETAAジャマイカ20周年記念式典やアウトリーチ活動を担当される予定です。
イーデン・ロー 元福島県 外国語指導助手 (2010-2011)
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症のパンデミックにより、各支部は活動の遂行やコミュニティーの維持に新たな課題を抱えています。しかし、JET経験者は常に臨機応変に課題に対応してきました。
例えば、JETAA支部は、日本に到着してからホテルで隔離しなければならない新規JET参加者を支援していました。隔離中の新規JET参加者は、過去の新規JET参加者と違い、日本での最初の数週間を探索したり楽しんだりすることができませんでした。コロナ禍の中で来日された新規JET参加者は、ネットで友人や家族に連絡を取ったり、配置先のことを調べたり、仕事の資料を作ったり、任用団体やCLAIRから与えられた課題をしたりして過ごしていたようです。
JETAAが企画するイベントは、新規JET参加者に楽しんでいただきながら、孤立感、退屈感、孤独感を和らげるのに役にたちます。また、これらの活動が人間関係を築き、将来的に活発なJET経験者を輩出するための土台となるなど、将来的に良い結果をもたらすことは明らかです。
JETAA支部が主催するオンラインでの交流は、形式ばらず、社交的なものです。いくつかのセッションは来日前オリエンテーションの延長線となり、JET参加者は質問をしたり、日本での生活や仕事に関するアイディアをJET経験者から得たりする機会になりました。また、「Discord」や「Jackbox」などのプラットフォームを利用して、「グループ・ゲーム・ナイト」も開催しました。JETAAシンガポール支部は、在京シンガポール大使館と大使とともに「バーチャル交流会」を開催しました。
また、同窓会(JETAA)はLINEやTelegram、Whatsappなどのメッセージアプリの利用を開始しました。他の支部では、精神的・社会的なサポートを提供するために、「先輩・後輩のバディーシステム」を利用しました。
これらの活動には、積極的な支持とフィードバックが寄せられています。スヴェン・トラシェフスキー(JETAAドイツ支部の国代表)はこのように語っています。「素晴らしい時間を過ごすことができ、新しいJET参加者はすでにJET経験者のネットワークの一員であることを実感している。新しい参加者がJETプログラムに選ばれた時点で、その人たちを支部に含めるというのは、当初から私たちが追求しているアプローチです。時間制限のない「オープンエンド」にして、1時間半ぐらいで人が退室し始めましたが、2時間ぐらいいた人もいました。特に、新規JET参加が参加しなければならない出発前オリエンテーションでの業務関連の「技術的」な説明会とは異なり、全員がこの集まりを楽しんでいたと思います。」
こうした支援活動は、ホテルの隔離期間中に限ったものではありません。JET参加者がプログラムに参加している間、確立された勢いを維持する可能性と余地があります。リネン・ティー(JETAAシンガポール支部の国代表)は、「日本の冬は、暖房がなく、年末年始に一人で過ごすのは少し厳しいので、数ヵ月後にまた参加者の様子を確認する予定です。Zoomで食事やお酒をご一緒するのもいいかもしれませんね」と話しています。
このパンデミックは困難で孤立したものですが、JET経験者が現役JET参加者に働きかけをするユニークな機会でもありました。リモートワークを可能にする技術やソーシャルコネクションは、最も必要とされる場所でのコミュニティーの構築に役立っています。世界各地のJETAA支部が、どのように状況に応じてJETコミュニティーへの支援を続けているか、貴重な教訓と見識を与えてくれます。
本記事にご協力いただいた、以下のJETAA国代表の方々に感謝いたします。タイ・ラム(カナダ)、ケンドラ・シム(ニュージーランド)、リネン・ティー(シンガポール)、スヴェン・トラシェフスキー(ドイツ)。
プロフィール
イーデン・ローは、福島県で外国語指導助手(ALT)をしていた頃(2010年~2011年)から元JET参加者の会(JETAA)に入会していました。現在、ロー氏はJETAA NSW(オーストラリア、ニューサウスウェールズ州)支部のメンバーであり、JETAA国際委員会のウェブマスターを務めています。JETAA以外では、オーストラリアのシドニーでコンテンツ・デザイナーとして行政に携わっています。
田中オティリアー 元山口県、東京都 JET国際交流員
2017年7月、防府天満宮への最後の階段を登り切ったとき、私の足は極度の疲労に震えていました。朱塗りの門には七夕を祝うきらびやかな短冊が吊り下げられ、壮麗な眺めでした。私は2日間かけて、山口県内の約55キロの道のりを萩市の勤め先から防府天満宮まで歩き通しました。「萩往還」として知られるこのルートは、17世紀に萩藩主が参勤交代で江戸(東京)と往復するために拓かれた道であり、林や道路、古い茶屋の跡を通っています。
目的地に到着した喜びは、このまま座りこんで一歩も動きたくないという気持ちに変わり、アイスを買って市街地の景色を眺めながら、風が色鮮やかな短冊をさらさらと鳴らす音に耳を傾けることにしました。七夕は、ベガとアルタイルが姿を変えた神である織姫と彦星が一年に一度だけ会うことを祝う祭です。七夕には、未来への願いを短冊に書き込む習慣があります。真夏の2日間のハイキングで疲れきっていたものの、ひらひら揺れる短冊を眺めていると、なんだか前向きな気持ちになりました。私は七夕にあやかって、目を閉じて願い事をすることにしました。その願いはかなえられたに違いありません。なぜなら、その翌月、私はかつての大名のように東京へと旅立ち、JETとしての二度目のキャリアを歩み始めたからです。
私自身は、山口県萩市と一般社団法人東京観光財団(TCVB)という非常に異なる2つの任用団体にCIRとして派遣されました。 |
JET参加者は、自分の派遣先や仕事内容がどうなるか、想像しがたいものです。
私自身は、非常に異なる2つの任用団体に派遣されたうえ、それらの団体で初の国際交流員(CIR)となりました。 最初の2年間は、美しく歴史溢れる山口県萩市、次の3年間は、東京都内のビジネスイベントを運営している東京観光財団(TCVB)で働きました。 対照的な2団体ですが、いずれの派遣先も、海外からの旅行者を日本へ招くことに力を入れていました。 2015年に世界遺産として登録された萩市は、海外観光客の注目を集めており、TCVBは、ビジネスイベントの誘致により、学術・文化の中心地である東京の知名度を上げるだけでなく、経済波及効果を狙う取り組みを行っていました。 異国からくる方々に、地域住民やその文化に触れあってもらうことで、思い出に残る旅をさせることが両配属先にとって、非常に重要なことでした。
萩市と東京の両配属先では、興味深く多様性のある業務に手を触れることができました。 |
JETでの仕事は多岐にわたり、萩博物館と協力し初めて作成した萩の世界遺産の英語ガイドブックの翻訳の仕事や、国際トレードフェアにて東京を誘致先として促進する仕事などがありました。これらの多様な業務のお陰で、海外からの観光客に自分たちをアピールをする際どの点が重視されるか知り、また、異文化交流や適切な翻訳の重要性に気づくことができました。そして、JETに参加するということは、「異文化大使」になることだと感じました。多くのJET参加者は、任期中沢山の人にかかわる機会があると思います。そこで母国や互いの文化について話すことで、外国人や異国に対して抱えている無自覚な固定概念が無くなる(または更に固定させてしまう)ことにつながります。
異文化交流の必要性はこれまで以上に高まっています。国際交流は、異なる文化や生活様式に対しての理解度を上げ、自己の文化の特殊性を明確にし、陥りやすい自国主義や孤立主義からの改善にもつながります。私は萩市での任期が終わってからも、「萩フロンティア大使」となり萩市とのつながりを持ち続けることができました。フロンティア大使は、ボランティアスタッフとして市が開催するイベントに参加しながら、大好きな萩市に関する情報を得ることができます。私は萩市が東京で開催したイベントに、ボランティアスタッフとして2度参加しました。JETの任期満了とともに日本との関わりが減るJET参加者もいますが、ほとんどの参加者が日本とのつながりを持ち続けています。JETは、参加者の視点を変える経験であり、今後も視点や考え方に影響を与え続けるでしょう。
今年の七夕は、息子の保育園が赤ちゃんたちのぽっちゃりした足形を使って織姫様と彦星様の紙飾りを作り、クリエイティブな才能を表してくれました。息子の代わりに、短冊に願い事を書きました。10ヶ月の赤ちゃんにとって優先事項だろうと思い、保育園の友達と楽しく遊べるように願いを書きました。私の今年の願い事も、似たような願いです。不安定で変わりゆくこの世の人々が文化の違いを乗り越え、共通点を祝い、仲良く一緒に遊べるようにと願っています。JETと同様、仲良くするには、相当な努力と自己認識、そして根深い固定概念への挑戦が必要です。JET経験者として、私たちは、独自の視点(及び高いコミュニケーション能力)を使って異文化理解を深めることができます。JET任期終了後も異文化交流大使としての役割は長きに渡り、多様性を尊敬し、不寛容を強く非難する、安定したグローバル社会を目指す責任があると信じています。
それでは、あなたの七夕の願いは、何でしょう?
プロフィール
田中オティリアー(旧姓ズティーヴェンズ)はイギリスの西南部の田舎地方ヘレフォードシャイアー州出身です。言語と美術の趣味を合わせて、イギリスのリーズ大学にて日本語、ファルマス大学にてイラストレーションを勉強しました。2015年からJETの任期が始まり、山口萩市にて2年間、東京都で3年間、JET国際交流員(CIR)として働きました。ライティングや翻訳、イラストレーションに興味があり、現在は、東京にある一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)JETプログラム事業部のプログラム・コーディネーターとしてJETで得たスキルを毎日活かしています。
JET経験者向けのニュースレター「JET Streams」では、JETプログラムでの生活や、プログラム終了後でも、その経験が与え続ける影響をテーマにした記事をご提供しています。CLAIR、世界各地の元JET参加者の会(JETAA)支部、JETAAインターナショナル(JETAA-I)はJET Streamsでそれぞれの活動を世界中に発信しています。また、個人のJET経験者からはエッセイ、記事、写真、就職活動で活かしたJETでの経験などをテーマに様々な内容の記事を執筆いただいています。JET経験者ならどなたでも記事の提出が可能です。幅広いテーマの記事の応募をお待ちしています。JET経験者にご提出いただく記事は、JETプログラム事業部のスタッフが編集に関するアドバイスや翻訳いたします。執筆ガイドラインや1991年以降から約30年に渡る記事はこちらを
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JET Streams秋・冬号の提出締め切りは10月3日(月)です。是非、挑戦してみてください。